昨日紹介した結論に至るまでの試行経路もさることながら、日独の間にはもっと分かり易い「小さからぬ差異」がいつくかあるので、この項ではそれに言及してみます。
私が個人的に最大の壁を感じるのは、やはりなんと言っても両国の食文化で、食に対する捉え方とか考え方の違いは相当に大きいと言わざるを得ません。日本人として「食い道楽」という概念に特段の違和感を覚えたり、理解不能だったり、拒絶感を覚えたりする人はおそらく皆無に近いと思うのだが、ここドイツに食い道楽に該当する言葉(Feinschmecker/schlemmer)はあっても、食い道楽を実践している人はかなりの少数派でしかなく、社会通念的には「食い道楽などは無駄なお金の使い方以外の何ものでもないわ!」と切って捨てて見せても多くのドイツ人たちから特段の違和感を持たれたりはしない筈です。「うん、まぁ、そうね。食い道楽とか別に要らないかな。お金ある奴は勝手にやればいいが、俺は絶対やらないから」ぐらいのもので。
※食い道楽/グルメ/美食家、これは厳密に言えばそれぞれ意味するところが違う、微妙に異なる概念だと私は捉えているのですが、なるべく話を簡潔にするために敢えて並列に捉えておきます。
食い道楽を究めようとする者は収入にもほど近い金額を食のために使う者も日本では珍しくありません。例えば私がそうでした(あえて過去形にしておきます)。高校生の頃からバイトを断続的にやっていたので普段から月に数万円の収入があり、夏休みや冬休みなどは一ヶ月間をまるまるバイトに充てるので十数万円の収入があったのですが、私はそのうちの7〜8割を「食」のために使っていました。ここは食い道楽がテーマなので、当然のことながら高校生の私はマクドナルドや吉野家あたりには行きません。稼いだバイト代を握りしめた高校生の私が毎週のように向かうのはフレンチや中華、インド、ロシア料理のレストランや鮨屋などであり、一回の食事に数千円〜二万円くらいかけるのが常でした。
実家が太いわけでも全然ない一介の高校生風情としてはなかなか頑張って食い道楽を実践していたわけですが、この行為を理解してくれる大人は周りに少なくなくて、「おまえ、ガキのくせにおもろいな!」とか「若いのに食に目覚めちゃって、こりゃ将来が思いやられるわww」とか「おしっ!おじさんがもっと美味い店教えてやろう!奢ってやるから一緒に来い!」などの是認を受けることが多々ありました。
しかし、これがもしドイツ社会で、実家も太くない一介の高校生が食事にこんなお金を掛けていたらバカだアホだクレイジーだと批判する大人はメッチャ多いのではないかと思われます。ドイツではやはり一般には「節約」が尊ばれ、例えば同じソーセージを買うにしても高い店より少しでも安い店で買う行為が是認されますし、食はあくまでカロリー摂取のための行為として捉え、美味しいとか美味しくないとかは二の次であるとうそぶく人もちょいちょいいたりするくらいです。
例えば河原でBBQをやるのに日本人の友人数名とは別にドイツ人の方を4〜5名でも呼んだとします。日本人メンバーはほぼ確実に何かしら持ち寄ります。肉かサラダかデザートかの何かしらは一々言わずとも各自がみんなで分けて食べられる分量を持ってきます。しかしドイツ人はどうかと言うと、1人か2人は日本人メンバーのようにちゃんとみんなで食べられる食材/食品を持参して来ますが、二人くらいは自分専用として一人前だけのお肉とかソーセージを持参し、残りの一人は手ぶらで河原にやってくるのです。
何度も見聞してる実話ですw